人材育成に関心を抱く起点になったのは1976年、私が大学4年生の時です。
幼い頃からスポーツが大好きだった私は小学生から中学までは甲子園を夢見る野球少年、高校ではダイナミックなコンタクトスポーツに魅せられたラガーマンでした。
大学ではラグビージャージ(昔からラグビーはユニフォームではなくジャージと呼びます)を身に着けることなく、文科系の英語クラブでディペードの関東大会で優勝を目指していました(結果は惜しくも準優勝でした)。
高校時代の友人が進学したA大学ラグビー部は、同じ頃に大学3部リーグ決勝戦で優勝を逃し、お互い悔しさを胸に苦い酒を酌み交わした夜は、今も忘れられない思い出です。
大学も所属クラブも異なる私達ですが、共通したクラブ環境がありました。指導者がいなかった事です。友人のラグビー部には監督、コーチがいませんでした(名目上の監督はおりましたが)。
練習メニューからトレーニング内容、試合スケジュール、合宿計画までを全て選手自身が自主的に計画し、運営するチームです。
私の所属した英語クラブも部長を中心に上級生が指導するクラブでした。
つまり私と友人は大学時代に既に、スパンティニアス(自発的能動)的な環境に出会っていました。
文科系クラブは大学4年生の夏に実質引退します。私はA大学ラグビー部でキャプテンを務める友人の誘いを受け、A大学ラグビー部に頻繁に出入りするようになっていました。
グラウンドではラグビーが好きな私にとって心地よく、楽しい気持ちにさせてくれました。それは部外者の私を何の違和感もなく受け入れてくれるA大学ラグビー部独特のチームカラーによるものでした。
大学体育会系というと厳格で上下関係が厳しく、理不尽を呑み込むような経験をされた方、あるいはイメージを抱く方が多いと思います。ところがA大学ラグビー部は一定の礼儀とリスペクトがありながらも下級生と上級生が冗談を言い合える学年差を感じさせない良い雰囲気のチームでした。
他大学生の私にも親しみを持って接してくれるラグビー部の為に私も練習を手伝ったり、観戦した試合の勝敗ポイントや気付いた内容を話すようになり、いつしかA大学ラグビー部のマネージャーのような存在になっていました。
大学ラグビーリーグ戦が始まるころ、私はリーダーシップに関するゼミを選択して卒業論文のテーマを模索していました。ゼミで興味・好奇心のある集団や業界のリーダーシップについてディスカッションをしていると教授が一言、
「君が関わっているA大学ラグビー部は随分ユニークだね、監督や指導者もいないのに最下位争いではなく、優勝争いをしているのは何故だと思う」
その言葉を聞いた時です、心にキラッと光が点いた瞬間でした。
「そうだ!A大学ラグビー部の事例研究だ‼」
そうして私の卒論テーマは、非営利の重要な団体にA大学ラグビー部を選択した「非営利団体のリーダーシップ」に決定しました。
事例研究の重要な要素の一つに『意識調査』があります。自分にとって誰をリーダーとして認めているか、なぜそう思うか、忌憚のない正直な部員達の気持ちを把握するための30を超える質問が用意されたアンケート調査票を作成し、キャプテンの友人と、他2名のチームリーダーに協力を依頼しました。
アンケートを終えた調査票を回収して結果をマトリックス図にしたところ、このチームはキャプテンを含んだ3人のリーダー間の関係にはっきりとした分断があることが判明しました。
このマトリックス図をゼミで学んだリーダーシップ理論と照らし合わせながら、チーム力強化の構想をまとめていました。
中編につづく